株式投資法人に限らず、長年のテーマでもあります。
投資を行う法人では、継続して安定的な利益が約束されるわけではなく、それが理由の一つでもありますが、実は単年度での比較はあまり意味をなさないことが多いです。
法人化のメリットは、単年度比較よりはむしろ、「中長期的に法人をいかに上手に使うか」ということになります。
ご興味がある方は、情報収集もほどほどに、ご自身に必要な情報だけをピックアップした上で自分だけの法人の上手な使い方を検討されることが一番の近道になるでしょう。
以下、法人化の代表的なメリットと対応する個人の比較表です。
多くの部分で個人を上回ることを示していますが、すべてを享受できるというよりはむしろ以下のなかから何点かに集中してその目的を達成することが実際の運営イメージに近いといえます。
法人 | 個人投資家 |
---|---|
経費枠が広い | 経費枠は限定的 |
損失が10年間繰越せる | 3年間繰越せる |
損益が通算できる | 損益は通算できない |
受取配当金の20%が益金不算入 | 15%または5%の配当控除あり |
節税策が多様 | 節税策は法人ほどではない |
決算期を変更できる | 決算期は変更できない |
社会的地位を得る | 社会的評価は高くない |
相続税対策が多様 | 相続税対策は可能 |
保有割合によるものの、多くのケースで上場株式等に係る受取配当金のうち20%が益金不算入となります。
これは、個人で言うところの、配当所得が20%減ると同じ効果があります。当然、法人化におけるその影響額は非常に大きくなります。
個人における配当控除が配当所得の15%または5%であることを考えれば、その効果は当然、法人の方が大きいと言えます。
上場株式等に係る受取配当金が300万円あるケースでは、約20%の60万円ほどが源泉徴収されます。
もしその法人が赤字のときは、実はこの60万円ほどは申告後に還付されることになります。
もちろん、個人でも還付申告を行えるケースもありますが、法人であればその可能性や還付額増大の可能性が大きく広がります。
それは、法人は赤字決算を目指すことが多いこと、また、黒字で着地しても広い経費枠から利益を圧縮できる可能性が高いと言えるからです。
法人税の実効税率は所得400万年以下のケースでも約22%以上になり、さらに、年7万円以上の住民税が固定的に発生します。
つまり、何も考えずに利益を会社に置きっぱなしにしていたり、高所得者(高税率適用者)であれば、個人で約20%の申告分離課税を受けていた方が良い、ということになりかねません。
ただし、法人の場合、給与や経費の出し方によって利益自体を大きく減少させることができますから、しっかりと考えれば、比較的簡単に実質税率を20%以下(場合によっては10%やそれ以下)にすることができます。
また、この納税コストとは別に、設立後の会計処理、決算・申告といった法人としての手続は、通常は会計事務所に委託するため、追加コストは30万円程かかります。
法人の申告は素人には難しく、効果的な節税を念頭に置くのであれば、会計事務所等に任せる前提で投資に集中し、年間30万円+住民税の7万円の合計40万円程はみておく必要があるでしょう。